2023年度グッドデザイン・ニューホープ賞 優秀賞GOOD DESIGN NEW HOPE AWARD 2023
Excellent Award
場のデザイン
23NHA020001
機械と人の大樹 -アキバ的精神のアイロニー-
小村 龍平(東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻)
人の暮らしは様々な機械に支えられているが、その存在は見えない。インフラ施設を〈幹〉とし、人のためのスラブを〈葉〉としたとき、雑多性が〈実〉る「大樹」が都市に実現する。失われつつある秋葉原の魅力と現代都市の課題を顕在化させたこの建築は、機械と人の関係性を再考し、お互いの生命を蘇らせる象徴としてこの地に聳え立つ。
インフラは、人々の生活を支える重要な社会資本として整備されてきたが、その多くは、私たちの生活の中で意識化されることはない。そのインフラを都市の中であえて可視化し、それらをつなぐために重厚長大な床を作り、人々の生活が自由に展開できる場を秋葉原に提案している。そのインフラが床の此処彼処に副次的に生み出す環境との応答関係の中で、偶発的に生起する多彩な活動こそ秋葉原的なものであるとする都市のイメージは、実に鋭い。また美しいドローイングが描く未来は、どこか懐かしさも漂い、魅力的だ。昨今の均質な再開発に対する異議申し立てとしても、力強い。